【前編】五常が世界中でマイクロファイナンスに取り組む意義とは? ローカルでありグローバルである強み

公開日:2022年9月20日
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すべての人に金融アクセスを届けることをミッションとして、途上国で事業向け小口金融サービスを展開されている五常・アンド・カンパニー株式会社
2021年8月にSiiibo証券が運営するプラットフォーム『Siiibo』を活用し、オンラインでの私募による社債発行を実現されました。

独自性のある事業内容、そしてなぜ社債による資金調達を行ったのか、どのように投資家への情報開示に力を入れているのか、CFOの堅田様に、弊社代表小村からインタビューさせていただいた内容を、3回に分けてお届けします。

五常・アンド・カンパニー 堅田様

お話をうかがった方:
五常・アンド・カンパニー株式会社 Chief Financial Officer 堅田航平様

現地の自律性を活かして「50カ国で1億人に低価格かつ良質な金融サービスを」

小村:まずは貴社のビジネス内容について教えていただけますか?

堅田:五常・アンド・カンパニーは、「金融包摂」、すなわちすべての人に金融アクセスを届けることをミッションに、現在はアジア4カ国(ミャンマー、カンボジア、スリランカ、インド)にある7つのグループ会社を通じて低所得者層向けの小口金融サービス(マイクロファイナンス)を提供しています。2014年の創業から、7月で丸7年を迎えました。

小村:貴社ならではの取り組みとしては、具体的にどのようなことをされているのでしょうか?

堅田:実は、マイクロファイナンス事業を複数国で展開している会社は多くありません。また、どの国においてもこの少額融資モデルを金太郎飴のように広げていくケースがほとんどですが、五常はパートナーシップモデルを採用しています。現地の起業家や実務家、つまりグループ会社の経営陣の方々とパートナーシップを結ぶことで、五常はグループ会社が自分たちで行うには限界がある機能を提供し、グループ会社では五常のサポートを受けながら、現地のお客様向けにより良いサービスを提供するという、かなり起業家精神を重視したモデルになっているんですね。

これはマイクロファイナンスというビジネスそのものと入れ子構造のようになっています。途上国でスモールビジネスを経営しているマイクロ起業家に融資を提供することによって、事業の拡大をサポートするのがマイクロファイナンス機関の役割です(お客様に占める女性の割合は98%以上)。五常とグループ会社の関係においても、経営陣の自律性を尊重しながら、五常として上手くサポートを提供するというモデルでやってきています。これはかなり特徴的と言えるのではないかと思います。

小村:実は私も学生時代に貴社代表の慎さんが書かれた「ソーシャルファイナンス革命」を拝読し、「民間版の世界銀行をつくる」という言葉が非常に印象的でした。具体的な事業目標や、その進捗状況はいかがでしょうか?

堅田:目標としては、低価格かつ良質な金融サービスを2030年までに50カ国で1億人以上に届けることを目指していますが、足元のお客様の数が71万人と、達成率はまだ1%にも達していません。
今はインドがビジネスの中心ではありますが、アジアにとどまらず、世界中で拠点を構築していきます。
もう一つが、金融商品・サービスの拡大です。これまでのビジネスの中心は他の多くのマイクロファイナンス機関と同様に小口融資ですが、テクノロジーを活用して、金融アクセスから排除されてきた人々に便利な金融サービスを拡大することが重要です。日常のお金のやり繰りを支えることが、これから五常が取り組むべきポイントです。

Siiibo証券小村 五常・アンド・カンパニー堅田様

グローバルな事業規模拡大とテクノロジーの活用で、業務効率と顧客利便性の向上を目指す

小村:グローバルでマイクロファイナンス業界全体が抱える課題も何かしらあるのではないかと思うのですが、他社との違いで課題を解決されている部分はございますか?

堅田:大きな戦略の方向性としては、グローバルな事業規模の拡大テクノロジーの活用、そしてローカルとグローバルの相乗効果というところですね。

まず、マイクロクレジットのコスト構造においては、融資の原資となる資金の調達コストが大きなウェイトを占めています。グループ会社各社が個別に資金調達を行うだけではなく、グループ全体のスケールメリットとリスクの地域分散を活かして、資金調達コストの最適化に取り組んでいます。

更に、五常の役割の一つに、グループ会社の内部統制・コンプライアンス・リスク管理・ガバナンスの水準を高度化するということがあります。資金提供者である先進国のレンダー(貸し手)から「五常のグループ会社だったら安心して貸せるよね」と思っていただけるようにすること。こうした複合的な取り組みで資金調達コストを最適化することで、収益性の向上、お客様に対する提示金利の引き下げ、より利便性の高い金融サービスを届けることにつながります。

次に、テクノロジーの活用によって、お客様の利便性を高めながら、業務効率を向上させていくことを両立できると考えています。
多くのマイクロファイナンス機関では、支店、営業職員、書類、現金に依存するアナログなオペレーションが温存されています。規模が小さいと、資金・管理する人材の両面においてテクノロジー投資の難易度は高くなってしまうので、五常ではグループ全体のスケールメリットを活かして積極的なテクノロジー投資や業務のデジタル化を進めています。

3つ目はこれからのチャレンジについてです。
マイクロファイナンスは基本的に極めて地域密着型のローカルなビジネスです。グループ会社の営業職員も日々バイクで移動しながらお客様とコミュニケーションを取り、新たなお客様を獲得しています。顔が見える関係性があるからこそ、お客様から返済を受けることができる。
一方、グラミン銀行などに端を発するビジネスモデルが世界中に広がった経緯もあり、似通っている点も多くあります。そのため、知見の共有ができたり、インフラシステムを他の地域で展開することができます。超地域密着型のビジネスでありながら、実はグローバルで知見やデータ、共通のテクノロジー基盤を活動できるという面白さがあります。
テクノロジーに関しても、モバイルですべて完結させるプレイヤーも出てきていますが、五常が目指すのは、テクノロジーの活用と、人間の間のふれあいをうまく組み合わせた「テック&タッチ」のハイブリッド型です。テクノロジーによって効率化できるところがある一方で、人間のふれあいやコミュニティのつながりによって担保されている信頼関係を活かしていくことが重要であると考えています。

小村:我々もハイブリッドモデルが求められている傾向を最近感じています。社債投資はインカムゲイン型というのもあって結構大きな金額を動かすことになるので、色々対面で聞きたいというニーズもお聞きしていて、単にネット証券としてウェブ上だけで申し込んでいただくだけではなく、もう少し接点を持つようになっていくんじゃないかなと考えているところです。

堅田:それは面白いですね。


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