スタートアップのためのベンチャーデットの最新動向と活用方法【イベントレポート】

公開日:2023年8月25日
目次(表示する)

2023年7月20日に開催された、一般社団法人スタートアップ協会主催の勉強会 「スタートアップのためのベンチャーデットの最新動向と活用方法」の開催レポートをお届けします。

スタートアップにとって欠かせない資金調達ですが、従来のエクイティファイナンスや銀行借入れだけでなく、昨今はベンチャーデットを始めとした選択肢の広がりが見られます。

今回の勉強会は、パネリストとしてベンチャーデット事業者2名と、モデレータとしてスタートアップの現役CFOを迎え、資金提供者・資金需要者双方の立場から、今注目のベンチャーデットについて忌憚なく語る場となりました。

アーカイブ録画はスタートアップ協会員限定のため、一部内容のみの紹介となりますが、まだまだ情報が限られているベンチャーデットについて知る足がかりとなるような情報を本記事にまとめています。

パネリスト・モデレータ紹介

パネリスト

小村 和輝 氏
Siiibo証券株式会社 代表取締役CEO

https://siiibo.com/

東京大学大学院工学系研究科修了(鳥海研究室)。
ドイツ証券株式会社にてトレーダーとして国内外の社債、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)、仕組債等のクレジット商品全般の取り扱いを経験。
その後、ブラックロック・ジャパン株式会社にて、国内の運用会社・公的金融機関に向けたリスク分析及び投資プロセスのアドバイザリー業務に従事した後、株式会社Siiibo(現Siiibo証券株式会社)を設立、代表取締役就任。


福田 拓実 氏
SDFキャピタル株式会社 代表取締役/共同創業者

https://www.sdf-capital.com/

早稲田大学商学部卒業。
UFJ銀行(現、三菱UFJ銀行)、リサ・パートナーズを経て、2008年にマイルストーンターンアラウンドマネジメントに入社。家電量販店やアパレル企業等、数多くの企業再生支援業務に携わる。その後、企業再生支援機構(現、地域経済活性化支援機構)に参画、メーカー企業に常駐し事業再生計画立案、執行に従事。
2014年、トパーズ・キャピタルに参画。入社以来融資実行案件は60件、250億円に上る。
2022年に日本初の独立系スタートアップデットファンドを設立。

モデレータ

中出 昌哉 氏
テックタッチ株式会社 CFO
Vice President, PMM/公共セクター・SaaS事業 事業開発管掌責任者

https://techtouch.jp/

東京大学経済学部、マサチューセッツ工科大学MBA卒。
野村證券株式会社にて投資銀行業務に従事し、素材エネルギーセクターのM&A案件を数多く手掛ける。その後、カーライル・グループにて投資業に従事。ヘルスケア企業のバリューアップや、グローバル最大手の検査機器提供会社への投資等を担当。
テックタッチ株式会社では、CFOロールに加えて、新規事業開発・事業戦略立案・プロダクト開発等も担う。

そもそも何故スタートアップがデットも活用すべきなのか?

最初のテーマとして、スタートアップの資金調達といえば、株式または新株予約権の発行によるエクイティファイナンスが一般的な中で、デットも活用すべき理由から確認しました。

「既にユニットエコノミクスが成立している、すなわちお金を投下すると高い蓋然性でリターンが増える、という資金使途であれば、デットの方が適しています」(小村氏)

「リスクのある事業や業態ほどエクイティが向いていますが、究極的にはエクイティよりもデットの方が資本コストが安いので、適切に活用すべきだと思います」(福田氏)

「例を挙げると、年10%の利息を払ってデットファイナンスを行い、1年ランウェイが延びたとします。このとき1年後に自社の時価総額が10%以上増加していれば、そのコストはリーズナブルだったといえます。このように、資本コストの目線でエクイティと比べると、デットの方が安いことがイメージしやすいのではないでしょうか」(小村氏)

まとめると、既存事業の運転資金のような資金使途であれば、デットを活用した方が資本コストに見合うといえます。

そこで気になるエクイティとデットの資本構成については、次のように見解が揃いました。

「とはいえフェーズや事業によって、デットが合わない場合もありますので、その点はきちんとお伝えしています」(福田氏)

「スタートアップであっても、全てエクイティで調達するのが適切という企業はなかなかなく、どのようなバランスでデットと混ぜるのが適切かは、事業ドメインや業態によって変わってきます」(小村氏)

ベンチャーデット手法同士の違いはどこにある?

スタートアップがある程度デットファイナンスを活用してみよう、と思い立って次に重要となるのは、ベンチャーデット手法が各種ある中でどのように比較検討すべきかではないでしょうか。
既に日本でも、銀行系ファンド、独立系ファンド、RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス)、ソーシャルレンディング、証券会社など様々な選択肢が存在していますが、それぞれの特徴や使い分けについて掘り下げました。

資金の出し手が誰かによって、貸し方が変わる側面はありますね。銀行やLPが出し手のファンドと、一般投資家とで審査内容などが変わってきます。例えば弊社(Siiibo証券)では、一般投資家向けの情報開示が必要ですが、その分資金使途が柔軟になります」(小村氏)

「もう一つの分け方として、エクイティを混ぜるかどうか、すなわちプレーンなローンかどうかという大きな違いもあります。ストックオプションなど株式要素を付ける分、金利を下げられるのが一般的です。必ず新株予約権を付けるところ、金利のみのところ、どちらも検討できるところ、いずれのパターンの事業者もあります。弊社(SDFキャピタル)のスタートアップ・デットファンドでは両方扱っています」(福田氏)

ここで中出氏から、ベンチャーデットの中ではどのように選ぶのがおすすめですかという投げかけがありました。
スタートアップ目線でまさに知りたい質問ですが、小村氏からは「出し手が足りていないので、バッティングしたり、良し悪しが出たりするほどプレイヤーの数がいない、というのが正直なところ」、
福田氏からも「全部に相見積もりを出すのは全然あり。他のベンチャーデット事業者さんの方が合いそうであれば、弊社から紹介することも」
という回答が得られました。

中出氏のコメントを引用すると、日本のベンチャーデット市場は「未成熟かつ活気がある」状況といえそうです。

ベンチャーデットの交渉を始めるべきタイミングは?

エクイティファイナンスの場合は、シリーズやラウンドといった目安と、それぞれにかかる調達期間の相場がある程度知られていますが、ベンチャーデットの準備はいつから始めればよいのでしょうか。

「まずシード期はまだ売上が上がっていないことから、デットの活用は難しく、お断りせざるを得ません。ある程度売上が立った時期から始めるのがよいでしょう。
また、例えば“3週間後に資金がショートします”というタイミングで慌てて駆け込んでも、さすがに間に合わないというのが正直なところです。
売上が見えて、VCが揃って、追加でデットをこれくらい引けないか、と思ったタイミングでコンタクトしてみていただきたいです」(福田氏)

「ベンチャーデットの交渉は、できるときに継続的に進めるのが理想的です。エクイティと違ってバリュエーションが確定してしまう訳ではないので、必ずいつまでにということはありませんが、一般的にはエクイティのラウンドが成功したタイミングに合わせる方が、好条件でデットも引きやすいですね」(小村氏)

他のスタートアップから資金調達の相談を受けることも多い中出氏は、
「エクイティの調達だけで手一杯なのですが、 どれくらい事前から前広にデットの検討もした方がよいのでしょうか? エクイティで忙しいので、そちらが終わってからでもよいのですか?」と尋ねられたことがあるそうです。
実際のところどうなのか、この場でずばり意見を聞いてみました。

「人を見てお貸しするので、完全な新規よりはお付き合いが長い方がお貸ししやすい、というのは正直なところあります。それなりに前広に話してもよいのでは」(福田氏)

「前広にご相談をいただければ、例えば現時点では自己資本比率上難しくても、エクイティ調達の見通しが立つ2ヶ月後から審査を進めましょう、といった具体的なご提案やスケジュール感をお伝えできます余力があれば先に話していただいて損はないと思います」(小村氏)

更に具体的なベンチャーデット情報収集に向けて

今回の勉強会では、ベンチャーデットに取組むために知っておきたい具体的な情報を、資金提供者・資金需要者双方の立場から幅広く集めることができました。

また、日本のベンチャーデット市場はまだまだ未成熟のため、事業者間で連携しながら、スタートアップにとって有益な情報発信に取り組む機会にもなりました。

本文でも語られていたとおり、ベンチャーデットの相談は前広にスタートできますので、少しでも興味を持たれたスタートアップの経営者・CFOの方々は、是非ファーストコンタクトを行ってみてください。


イベント主催者の紹介

一般社団法人スタートアップ協会
スタートアップ協会は、スタートアップによるスタートアップのための非営利団体として2022年に設立。 「スタートアップの互助により日本を『スタートアップのための世界最高の環境』に進化させる」ことをミッションに掲げ、会員を当事者であるスタートアップに限定し、実態把握、情報共有、政策提言を行っています。
https://www.startup-kyokai.org/

手数料無料。最短3分で申込完了

口座開設はこちら
口座開設はこちら
ここからはSiiibo証券の公式サイトです

直前にご覧いただいていたウェブサイトは、当社が作成したものではありません。 そこに掲載されている感想や評価はあくまでもサイト作成者自身のもので、その内容を当社が保証するものではありません。

Siiibo証券の公式サイトへ