個人向け社債の概要とリスク、劣後債の発行事例
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小口で購入可能な個人向け社債
社債とは、企業が資金調達をするために発行する債券です。発行額で見た時には、機関投資家を対象にした、最低購入価格が1億円程度の社債の割合が多いです。
個人向け社債は、個人の投資家でも購入できるように最低購入価格を数十万円から100万円程度に抑え、小口化して発行されたものを言います。社債発行額に占める個人向け社債の割合は、2022年でおおよそ15%~20%の間です。
発行企業にとっては資金の調達先を多角化することで安定した資金調達を計れる点にメリットがあり、投資家にとっては、預貯金や国債よりも高い利率の投資商品としてのメリットがあります。
個人向け社債のリスク
個人向け社債は同じ債券である国債よりも高い利率が設定される傾向にあり、株式投資よりも市場相場に左右されるリスクが低い事から、相対的にミドルリスク・ミドルリターンな商品として位置づけられています。
とはいえ相応のリスクも持ち合わせていますので、確認していきましょう。
①信用リスク
社債の発行企業の経営不信などにより、債務不履行(デフォルト)を起こす可能性があり、元本の償還や利息の支払いがされない可能性があることが信用リスクです。
信用リスクをはかるためには、社債発行企業の情報を知ることが重要です。発行企業の情報は、「有価証券報告書」「決算短信」、「決算公告」、「事業計画書」などで確認することになります。
また、格付会社による格付けがされた債券もあり、信用リスクを計る参考材料の一つとして活用できます。
②価格変動リスク
個人向け社債の市場価格は、市場の需要と供給のバランスによって決まります。
価格変動の幅は、金利と発行企業の財務状況が大幅に変動しなければ株式ほど大きくありませんが、発行企業の財務状況が悪化すると、デフォルトの可能性に多くの社債保有投資家が敏感になり、債券を売却することで価格が下がります。
このように、市場に影響されて価格が下がってしまう可能性のことを価格変動リスクと言います。
③流動性リスク
流動性リスクとは、売りたいときに売れず、買いたいときに買えないリスクを指します。
買いたい・売りたいと思った時にすぐに買い手・売り手が見つかり売買が成立する環境であれば流動性が高いと言えますが、反対に、買い手・売り手が見つからず、すぐに売買ができない可能性が高ければ、流動性リスクが高いと言えます。
個人向け社債で理解しておくべき劣後債
劣後債は、元本と利息の支払優先順位が普通社債に比べて低く設定されている社債で、不確実要素が大きい分、普通社債よりも高めの利率が設定される傾向にあります。
購入には発行企業の十分な理解が必要です。
発行企業にとっては、劣後債は資本として計上できるため、格付けを下げることなく自己資本比率を維持できます。
発行時、比較的高く設定される金利やその他手数料などを考慮しても、これは企業にとって大きなメリットとなる場合があります。
劣後債の発行事例
代表的な劣後債の発行事例として、ソフトバンクグループ株式会社の「ソフトバンクグループ第5回無担保劣後社債」※が挙げられます。発行総額5,500億円、利率2.48%の個人向け社債です。
年限は一般的な社債の年限よりも長い7年でしたが、2022年2月に発行されると各証券会社で人気を集め、早期に完売となりました。
この社債の格付けを見てみると評価はBBB+であり、日本格付研究所(JCR)の評価では「債務履行の確実性は認められるが、上位等級に比べて、将来債務履行の確実性が低下する可能性がある。」とされています。
前述の通り劣後債は万が一企業が財政破綻した場合の弁済順位が普通社債よりも低い社債なので、市場での人気だけでなく、企業の財務状況などを検討した上で購入を考えるのが良いでしょう。
※参考:ソフトバンクグループ 第5回無担保社債(劣後特約付)の発行に関するおしらせ
個人向け社債は個人投資家でも購入できる社債
個人向け社債は機関投資家向けに発行される社債とは違い、個人でも購入できるように小口化された社債のことでした。
保有している間、定期的に利息を得られる投資商品の中では預金や国債よりも高い利率がメリットですが、利率が高い分、リスクも備えています。
購入にあたっては発行企業の財務状況などを調べ、自身の投資目的に沿うかどうかを検討するようにしましょう。