社債が償還されるタイミングとは？その種類と特徴・注意点を解説

社債の償還とは満期日に投資したお金が返金されること

償還とは、満期日に社債の保有者へ額面金額が支払われることをいいます。債券の特徴であり、株式との相違点といえるでしょう。債券は、お金を借りた借用証書のようなものであり、債権者に借金を返済することが償還、借金を返済する期限が償還日または満期日になります。

期限前に償還される「途中償還」の種類

借金の返済期日にあたる償還日より前に、元本が返済されることを途中償還といい、期中償還・早期償還・期限前償還などの呼び方もあります。多くの場合、あらかじめ決められた償還日に償還されますが、社債によっては償還日前に全額もしくは一部を償還させることができ、それを途中償還といいます。

定時償還

おもに社債で用いられる償還方法です。
途中償還のひとつで、社債の発行時点で据置期間や途中償還価額、途中償還日が決められており、その条件に従って償還されます。満期日まで償還しないことがほとんどのため、結果的に通常の満期償還と変わりません。

任意償還

繰上償還ともいわれ、発行体の任意で社債の一部または全額が償還される方法です。また、また、期限前に償還される事による保有者のデメリットを「償還プレミアム」という額面を超過した支払いでカバーする場合があります。

買入償還

発行体が償還前に、流通市場または相対取引で社債を購入することで償還する方法です。このとき社債は「消却」されるため、買入消却と呼ぶこともあります。なお、この償還に強制力はなく、売却するかどうかは社債の保有者の判断に委ねられます。

社債の償還価額と発行価格が異なるケース

前章では、償還日をまたずに元本が支払われる途中償還を紹介しました。途中償還されてしまうと、投資家は計画していた利息を全額受け取れない償還リスクを負うことになります。
一方で、途中で償還される心配がない社債もあります。

割引債

割引債は、利子（クーポン）が付かない社債で、ゼロクーポン債ともいわれます。利子が付かない代わりに、償還価額よりも低い発行価格で購入できます。利付債で支払われる利子の代わりに、償還益を得る仕組みです。たとえば、額面金額100円のところ、発行価格97円で購入した割引債の利回りは約3.09％という具合です。

社債が償還されない特殊なケース

社債は償還日に元本が支払われるという点が大きな魅力です。しかし、保有者へ償還されない可能性もあります。たとえば、発行体がデフォルトした場合や、特殊な特約が付されている社債を保有している場合です。

発行企業の倒産（不良債権）

万が一発行体の企業が倒産した場合、債券は通常、債務を弁済する順位が高いです。この順位は、担保付社債、無担保社債、劣後債、優先株、普通株の順であることが一般的です。しかし、これはあくまで順位であり破綻時の状況によっては上位にあったとしても、元本が支払われずに不良債権となるケースもあります。

新型劣後債

劣後債とは、一般の債券に比べ、元本と利息の支払いの順位が低い社債のことです。会社更生手続きの開始や破産などといった予め劣後特約で定められた劣後事由の発生時には、一般無担保社債などの一般債務の支払いが劣後債よりも優先され、その弁済が完了した後に返済原資がまだ残っていれば劣後債の返済が行われます。

なかでも、「実質破綻時免除特約」が付いている新型劣後債は、発行体が元本を返済できないか、その可能性がある場合に、元本や利息の支払いが免除されるので注意が必要です。

社債償還時の税金

社債を額面金額よりも安い価格で取得し、償還時まで保有した場合、額面金額と取得価格との差額が利益となります。逆に、社債を額面金額よりも高い価格で取得し、償還日まで保有した場合は、額面金額との差額が損失となります。

償還差益に対しては税金が課されます。社債は国債や公募公社債などの特定公社債と、私募社債などを含む一般公社債に分類されます。税率は一部の場合を除き、基本的には20.315％になっています。特定公社債は上場株式等のグループと、一般公社債は一般株式等のグループと同じ課税の扱いになり、償還差損益については、それぞれのグループで損益通算できます。

※詳細は必ず税理士にご確認ください。

社債の利息にかかる税金については、社債の利息とは？利息（利子所得）にかかる税金や納税ルール、損益通算について解説の記事も参照してください。

社債の償還方法や条件の確認が重要

この記事では、償還の種類や特徴などをお伝えしました。社債の発行時、定められている償還の条件によっては、比較的利率が高く設定してある場合もあります。利率が高い分、発行体から任意償還の権利が行使され、投資家の投資計画よりも早いタイミングで償還されることもあります。社債を購入する際は、償還方法や条件を確認した上で、投資判断を行うのが適切です。